平成23年9月定例会 代表質問

被災者支援システムの早期構築について

 災害後の被災者の生活再建を早急に実施するためには、行政として平常時からの備えが重要である。その点、阪神淡路大震災後に西宮市で開発された「被災者支援システム」は大変優れており、総務省も推奨している。たとえば、罹災証明書を速やかに発行できるシステム、避難所の入退所情報を世帯・個人で管理できるシステム、全国からの膨大な緊急支援物資を一元的に管理し避難所の状況に応じて出庫・配布できるシステム、被災家屋やがれき処理を管理できるシステム、被害状況を地図上に可視化できるシステムなどが連携したものである。このように被災後の自治体が必要とする機能をカバーできるように構築されていることから、本市においても一日も早く導入・運用すべきと考えるがどうか。

 本市においては、今年度から、災害時の情報収集や災害初期の職員動員、物資の管理等を行うための「総合防災情報システム」の構築に着手している。この総合防災情報システムに被災者支援システムの機能を付加すれば、他の機能とも連携が可能になるとともに、災害情報の一元管理により、被害全体を早期に把握して迅速な対応につながるものと考えられる。したがって、費用対効果や事務の効率化等も踏まえ、総合防災情報システムに議員ご指摘の被災者支援システムの機能を付加する方向で、今後検討を進めてまいりたい。

健康科学研究センターの機能強化について

 健康科学研究センターは、平成19年の開設であるため、当初に導入された検査機器等はすでに4年半を経過している。通常、機器類は5年程度で更新する例が多いが、検査の精度や信頼性をどのように確保しているか。また、検査効率の向上や、市民サービスの向上のために検査時間の短縮が求められるのは当然として、市民の命を守る砦として、今後計画的に新しい機器等を導入したり古くなった機器等を更新したりして健康科学研究センターの機能強化を図るべきであると考えるが、どのように進めようとしているのか伺う。

 機器の更新時期が定期的に重なってくることから、耐用年数や、使用状況、必要な検査項目などを考慮し、予算の平準化を踏まえ、機能低下を招くことのないよう計画的な機器の更新整備を進めてまいりたい。具体的には、平成23年度は、食品の放射能検査に使用するゲルマニウム半導体検出器を導入し、さらに、新生児マス・スクリーニング検査に使用するタンデムマス質量分析計や、大気中アスベスト測定用の走査型電子顕微鏡を整備する。平成24年度以降も、感染症の検査、食品中の残留農薬や動物用医薬品の検査に使用する機器を計画的に更新整備し、迅速な、健康危機管理対策に備えていく。

感染症予防対策の推進について

 2009年5月中旬、神戸市で海外渡航歴のないノーマークの高校生が新型インフルエンザに感染していたことが判明。5日間に88名の感染者が確認され日本中に緊張が走った。感染症については、定点サーベイランスということで、医療機関から患者の発生を保健所に報告する体制はあったが、この発生をつかむことはできなかった。この反省から生み出されたのが、保育所、学校、高齢者施設、障害者施設などの地域の施設との連携による感染症早期探知システム「神戸モデル」である。 本市においても、感染症の集団発生には、サーベイランスの網の目をカバーする何らかの取り組みが必要だと考えるが、どのように進めているのか伺う。

 新型インフルエンザに関して、本市では、平成20年度から新型インフルエンザ対策検討会及び専門部会の中で、各医師会や中核病院と対策の検討や情報共有を行ってきた。平成21年に実際に新型インフルエンザが発した際には、各医師会にご協力いただき独自に市内インフルエンザ患者の全数把握を行い、発生状況の把握に努めるとともに、感染症指定医療機関以外の中核病院、また全病院・診療所での患者対応をしていただくなど連携強化を図った。更に、社会福祉施設、学校等にも情報提供の協力をいただいた。今後も、国や県、また、各医師会をはじめとする地域の関係機関・団体等との連携を深め、状況に応じて、国や県の示す対策以外にも、よりきめ細やかな対策を講じる等、適切に対応を図ってまいりたい。

成年後見制度の創設について

 平成12年4月にスタートした、介護保険制度による介護サービスが、「措置」から「契約」へと移行したため、自ら契約行為ができない方を想定し、それを補完する目的もあり、成年後見制度が同時に施行された。成年後見制度は、このところ急激に利用を増やしており、安心して頼める後見人の確保が今後の大きな課題である。後見人不足や経済的負担などといった問題を解消する切り札として期待されるのが、「市民後見人」である。「市民後見人」を養成する事例も増えてきている。本市においても、市民成年後見人を育成し後見監督人を確保して法人後見ができるような制度を創設すべきではないか。

 全国19の政令市の状況を見ると、すでに7市において、社会福祉協議会内に「成年後見センター」または「権利擁護センター」などの名称で専門の機関を設置し、市民後見人の育成と活動の場づくり、また、市民後見人の後見監督といった業務を実施している。そこで、本市においても、このような機関を社会福祉協議会の中に設置することができないか検討を進めており、早期設置に努めたいと考えている。同制度の利用を必要とする市民の安心・安全な生活を保障するため、また、市民の支えあいの志を尊重して活動しやすい環境づくりを図った市民後見人制度の創設等に積極的に取り組みたい。

発達障害児の早期発見について

 障害者自立支援法の改正によって、障がい者の範囲が見直され、自閉症などの発達障がい者も福祉サービスの対象に位置付けられました。これによって市町村にあってはより一層の支援体制の充実が求められている。障がいに対する働きかけ、いわゆる「療育」は、可能なものからできるだけ早期に開始することが望ましいとされており、大体2歳くらいの年齢から適切な療育を開始すると、より大きな効果が期待できる可能性があると言われている。が、逆に、適切な診断や療育がなされないと、親の不安が増したり、虐待を招いたり、子育てを巡って家族間のトラブルを引き起こしたりすることにもなりかねない。
 発達障がいの早期発見について行政としては、問題点が見えてくる時期に見落とさず適正に発見するという考えで取り組むこと体制作りが必要と考えるが、いかがか。

 発達障害の早期発見は、それぞれの年齢、それぞれの生活場面において行われ、それを支援につなげることが極めて重要なことであると認識している。総合療育センターひまわり学園と療育センターさくら草は、主に、乳幼児期の早期診断と支援の場としての役割を担っている。諸検査を実施して障害名や障害程度を確定するとともに保護者に障害への理解と需要を促している。併せて、区保健センターで実施している乳幼児発達健康診査へ小児神経科医師を派遣し早期発見に努めている。幼稚園や保育園の職員を対象に毎年、療育講座を開催するとともに作業療法士、心理士などを派遣する出張カンファレンスも行っている。今後も、早期発見、支援に向け鋭意取り組んでいく。

医療療育センターの機能の強化拡充について

 現在の総合療育センター、ひまわり学園は、昭和58年に開設されすでに29年目を迎えている。知的障害児、肢体不自由児、難聴児の通園、外来診療と外来療育の機能を持ち、併設されている市立養護学校とも密接な連携のもとに運営されている。しかし、ひまわり学園開設当時は、発達障害について全く想定されてはいなかったので物理的にも機能的にもまた受け入れ人数においてもこれ以上の対応が難しくなっているのではない。近年、発達障害の相談診療も大きく増えてきており診察を受けるまで待つ期間も長くなっており、療育を受ける回数も十分ではないと考える保護者も多いようだがどう考えておられるのか伺う。また、新都心の8−1A街区へ県の小児医療センターが移転してくる絶好の機会を生かして、高度な医療体制との連携強化を図り、「発達障害児療育支援センター」機能を導入すべきと考えるがいかがか。

 総合療育センターひまわり学園は、利用児の増加に加え、障害の重度化、多様化、低年齢かなどその状態像についても開設当初に比べて変わってきておりこの変化が様々な課題として出てきている。現状では、診療予約から、初診に入るまで3カ月前後お待ちいただく状況になっている。また、診療室・訓練室の不足に加えて、動きの大きなお子さんに対する指導室の不足等があり、多様なニーズへの対応を迫られている。将来的には、建て替えや機能の拡充について公共施設マネジメント計画を踏まえて考えていく。新都心8−1A街区への「発達障害児療育支援センター」機能のご提案については、旧大原中学校跡地に建設が予定されている(仮称)子ども総合センターの基本構想にある「総合相談機能」「専門相談機能」の中で、療育の一定の機能を効果的に展開していくことを検討していく。

引きこもり地域支援センターの設置について

 厚生労働省の推計では、ひきこもり状態の人が全国で約70万人に上るとされている。これをさいたま市に単純計算で当てはめてみると7,000人になる。近年の引きこもりの傾向は、引きこもりの長期化によって本人が高齢化し平均年齢は31歳に達していること、とともに親の高齢化も進行し、年金生活の中で子供を必死で支えながら親亡き後の心配が高じていることがあげられている。また、引きこもりの多く、ほぼ9割に何らかの精神障害が認められるとの報告もある。このような状況に対応して、引きこもりの方やその家族を支援していくためには、引きこもりの家族会などのように長年現場感覚で支援の取り組みに携わってきた団体と連携することが非常に有効だと考える。そこで、このひきこもりの第1次相談窓口となる、ひきこもり地域支援センターの一日も早い設置を進めるとともに公的支援ネットワークの中に家族会等の地域での支援団体を参画させるべきと考えるがいかがか。

 厚生労働省では、平成21年度より都道府県及び政令指定都市に、ひきこもりに特化した第1次相談窓口としての「ひきこもり地域相談センター」を整備することとし、平成23年1月4日時点で全国28自治体に開設されている。本市では、引きこもりの特性などを踏まえ、当該センターの機能として、@引きこもりに関する第1次相談窓口として市民に周知しひきこもりの本人、家族等からの相談に対応、A情報交換等、関係機関の恒常的な連携、B必要に応じて、医療・教育・労働・福祉などの適切な相談機関につなぐ、Cひきこもり問題に関する情報発信や普及啓発などを考えている。今後さらに、医療機関や、NPO等の民間支援機関とも連携のための協議を進め、関係機関が一体となって、本市の実情に応じたひきこもり支援の方法を検討し、「さいたま市ひきこもり地域支援センター」の設置に向けて検討を進めてまいりたい。

少年自然の家利用の現状と再編・再整備について

 

 市内小中学生の自然体験学習は、舘岩、赤城両少年自然の家を中心に、六日町、南郷の4か所の施設を利用して行われている。はじめに施設ごとの利用の現状について伺う。次に、「自然の中で集団で行われる直接体験の機会は、社会的存在としての人間性回復の場である」と言われるほどであり、自然体験活動の意義は非常に大きいといえる。子供たちの教育にとって望ましい自然体験活動の在り方を本市としてはどのようにとらえているのか伺う。

 平成22年度の実績としては、舘岩少年自然の家では、小学校37校、中学校83校、赤城少年自然の家では、小学校57校、六日町山の家では小学校8校、ホテル南郷では中学校10校で利用している。自然の教室は、「自然への畏敬の念」や「集団の一員として他者を思いやる心」「規律ある態度」などの育成を目的としている。教育委員会としては、都市部に生活するさいたま市の児童生徒にとって、極めて重要な教育的意義をもつ事業であると考えており、少年自然の家には専門職としての指導主事を配置し、水準の高い自然体験活動の実施に努めてきた。

「日本一の教育都市」を目指す本市においては、すべての児童生徒に、より質の高い自然体験活動の機会を提供すべきと考える。そうした観点から、次の時代を見据えて少年自然の家の再編・再整備を具体的に進めるべき時に来ていると思うがいかがか。将来を見据えての再編・再整備では、舘岩少年自然の家をさらに拡充してすべてを集約するか、2か所ぐらいに再編成することが現実的ではないか。本市教育の自然体験学習の充実に向けた少年自然の家の再編・再整備について伺う。

 合併前の旧市によっては、実施していなかった学校や民間施設を利用していた学校もあり、経費の保護者負担にも大きな格差があったことから、これまで、すべての学校が自然の教室を市の施設で実施できるよう、条件の整備に努め、保護者負担の軽減及び平準化を図ってきた。再編・再整備については、当面は、さいたま市が所有する市民保養施設も有効に活用しつつ維持管理の効率化と、自然体験活動の更なる充実を図る観点から将来的には舘岩少年自然の家に必要な整備を行い、統合していく方向で検討してまいりたい。

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